定年後の健康保険どうする?「任意継続」と「国民健康保険」賢い選択肢を徹底解説!損しないための知識を網羅
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定年退職という大きな節目を迎えられた皆さま、おめでとうございます。
長年勤め上げた会社を離れ、いよいよセカンドライフが始まりますね。
新しい生活への期待とともに、一つ気になるのが「退職後の健康保険はどうなるんだろう?」ということではないでしょうか。
- これまで会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に入っていたけれど、定年後はどうすればいいのか
- 保険料はいくらになるのか
- 家族(被扶養者)はそのまま入れるのか
不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。
今回の記事では、定年後の健康保険の主な選択肢である
- 「任意継続被保険者制度」
- 「国民健康保険」
を中心に、
- それぞれの特徴
- メリット・デメリット
- 気になる保険料の目安
- 扶養家族
について、分かりやすく徹底的に解説します。
この記事を最後まで読んでいただければ、あなたの状況に合った最適な健康保険の選び方がきっと見えてくるはずです。
ぜひ、後悔しない健康保険選びの参考にしてください。
退職後の健康保険、主な選択肢は3つ
会社を定年退職すると、これまで加入していた会社の健康保険の資格を失います。
退職後の健康保険には、主に以下の3つの選択肢があります。
- 任意継続被保険者制度に加入する
- 国民健康保険に加入する
- 家族(子や配偶者など)の健康保険の被扶養者になる
75歳になると、これらの制度から後期高齢者医療制度に移行することになります。
しかし、まずは定年退職直後の選択肢について詳しく見ていきましょう。
選択肢①:任意継続被保険者制度とは?メリット・デメリット
「任意継続被保険者制度」は、これまで加入していた会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に、退職後も引き続き最長2年間、任意で加入できる制度です。
加入できる条件
- 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上あること。
- 退職日の翌日から20日以内に申請手続きを行うこと。
保険料について
- 保険料は、退職時の標準報酬月額(上限あり)と標準賞与額に基づいて計算されます。
- これまで会社が保険料の半分を負担してくれていましたが、任意継続では全額自己負担になります。ただし、上限が設けられている場合が多いです。
- 保険料は、加入時の金額から2年間変わりません。
任意継続のメリット
- これまでと同じ給付が受けられる: 傷病手当金や出産手当金など、現役時代と同様の給付が受けられる場合があります(ただし、要件あり)。
- 扶養家族もそのまま入れる: 家族(被扶養者)の加入条件を満たせば、追加の保険料なしでそのまま扶養に入れられます。家族が多い場合は保険料負担が抑えられる可能性があります。
- 保険料が安定している: 2年間保険料が変わらないため、家計の見通しが立てやすいです。
- 会社の健康保険組合によっては付加給付がある: 会社の健康保険組合独自の給付(医療費の自己負担限度額の上乗せなど)がある場合があります。
任意継続のデメリット
- 保険料は全額自己負担: 現役時代の約2倍の保険料負担となります(ただし、上限あり)。
- 加入期間は最長2年間: 2年を過ぎると、国民健康保険などに切り替える必要があります。
- 原則として途中でやめられない: 保険料の未払いなどの特別な理由がない限り、2年間の期間中は原則として脱退できません。
- 退職後20日以内に手続きが必要: 期限を過ぎると加入できなくなります。
選択肢②:国民健康保険とは?メリット・デメリット
「国民健康保険」は、お住まいの市区町村が運営する健康保険制度です。会社の健康保険や後期高齢者医療制度に加入していない、全ての人が加入する制度です。
加入できる条件
- 日本の居住者であり、他の健康保険(会社の健康保険や後期高齢者医療制度など)に加入していないこと。
保険料について
- 保険料は、前年の所得、世帯の人数、お住まいの市区町村によって大きく異なります。
- 主に「所得割」「均等割」「平等割」「資産割」などを組み合わせて計算されます(市区町村によって計算方法が異なります)。
- 保険料は毎年見直されます(通常4月)。前年の所得が確定すると、その年の保険料が決定します。
国民健康保険のメリット
- 加入期間の制限がない: 任意継続のような2年間の期間制限はありません。
- 退職から日数が経過していても加入できる: 任意継続のように退職後20日以内という期限はありません(ただし、手続きが遅れるとさかのぼって保険料を支払う必要があります)。
- 世帯単位での加入・保険料計算: 世帯主がまとめて保険料を納めます。
国民健康保険のデメリット
- 保険料が毎年変動する可能性がある: 前年の所得によって保険料が変わるため、家計の予測が立てにくい場合があります。特に、退職した年の翌年は前年の所得が多いため、保険料が高くなる傾向があります。
- 保険料に上限がない(任意継続と比較して): 所得が多い場合、任意継続の上限保険料よりも高くなる可能性があります。
- 傷病手当金や出産手当金がない: 任意継続のようないくつかの給付はありません(高額療養費制度などは利用できます)。
- 扶養家族という概念がない: 家族一人ひとりが被保険者となり、世帯として保険料が計算されます。家族構成によっては任意継続より保険料が高くなる可能性があります。
選択肢③:家族の扶養に入る
子や配偶者など、家族が加入している健康保険の被扶養者となる方法です。
加入できる条件
- 主に、扶養する家族によって生計を維持されており、かつ年間の所得が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であることなど、厳しい収入要件があります。
- 同居・別居などの要件もあります。
メリット
- 自己負担の保険料がない: 扶養に入る側の保険料負担はありません。
- 家族が加入している健康保険の給付を受けられる: 扶養者と同じ健康保険の給付が受けられます。
デメリット
- 厳しい収入要件を満たす必要がある: 一定以上の収入がある場合は利用できません。
- 家族の健康保険の種類によっては対象外の場合がある: 一部の健康保険組合では独自のルールがある場合もあります。
任意継続 vs 国民健康保険:あなたはどちらを選ぶべき?徹底比較
定年退職後、多くの方が「任意継続」と「国民健康保険」のどちらに加入するかで迷われます。
どちらがお得かは、あなたの状況(退職時の給与、家族構成、お住まいの地域など)によって異なります。
比較する上で重要なポイントは以下の通りです。
比較項目 | 任意継続被保険者制度 | 国民健康保険 |
---|---|---|
加入期間 | 最長2年間 | 制限なし |
保険料の計算 | 退職時の標準報酬月額(上限あり) | 前年の所得、世帯員数、市区町村によって異なる |
保険料の変動 | 2年間変わらない | 毎年(通常4月)変動する可能性がある |
保険料の自己負担 | 全額自己負担(ただし上限あり) | 全額自己負担 |
傷病手当金など | 要件を満たせば支給される場合がある | 原則として支給されない |
扶養家族 | 扶養条件を満たせば追加保険料なしで加入できる | 扶養の概念はなく、世帯員として保険料が計算される(世帯員数が多いと保険料増) |
加入手続き期限 | 退職日の翌日から20日以内 | 特になし(遅れるとさかのぼって保険料が発生) |
切り替え | 2年経過後、または特別な理由で脱退後、国保などに切り替え | 必要に応じて他の健康保険や後期高齢者医療制度に切り替え |
どちらがお得かを判断するポイント
- 保険料の試算を必ず行う: これが最も重要です。
- 任意継続の保険料: 退職する会社の健康保険組合(または協会けんぽ)に問い合わせて、任意継続した場合の保険料を試算してもらいましょう。退職時の給与や賞与、任意継続の上限額によって決まります。
- 国民健康保険の保険料: お住まいの市区町村の役場に、退職後の所得の見込みなどを伝えて、国民健康保険に加入した場合の保険料を試算してもらいましょう。前年の所得(退職前の給与や賞与)が大きく影響します。
- 家族構成: 扶養に入れる家族が多い場合は、任意継続が有利になるケースが多いです。
- 退職後の収入見込み: 退職後も一定の収入が見込まれる場合は、国民健康保険の保険料が高くなる可能性があります。
- 2年間の保険料の変化: 国民健康保険は退職した年の翌年に保険料が高くなる傾向があります。任意継続の2年間固定の保険料と比較検討しましょう。
- 付加給付の有無: 加入していた会社の健康保険組合の付加給付が魅力的であれば、任意継続を検討する価値があります。
多くの場合、退職した年の翌年の保険料は、任意継続の方が国民健康保険よりも安くなるケースが見られます(特に所得が高かった方)。
しかし、2年経過後は国民健康保険に切り替える必要があります。
その時点での所得で保険料が再計算されます。
健康保険の切り替え手続きと注意点
手続きの流れ
- 退職前に情報収集: 会社の担当部署に、任意継続の保険料試算や手続き方法を確認しましょう。
- 市区町村に問い合わせ: お住まいの市区町村の役場に、国民健康保険の保険料試算や手続き方法を確認しましょう。
- 比較検討: 試算結果や制度内容を比較し、最適な選択肢を決めます。
- 手続き: 選択した健康保険の手続きを行います。
- 任意継続: 退職日の翌日から20日以内に、加入していた健康保険組合または協会けんぽに申請します。
- 国民健康保険: 退職日の翌日から14日以内に、お住まいの市区町村の役場に届け出ます(期限を過ぎても手続きは可能ですが、保険料はさかのぼって発生します)。
- 家族の扶養: 扶養に入る家族の勤務先に確認し、手続きを行います。
注意点
- 手続き期限: 任意継続には20日以内という厳格な期限があります。この期限を過ぎると任意継続の選択肢はなくなります。
- 保険料の納付: 任意継続も国民健康保険も、原則としてご自身で保険料を納付する必要があります。納付を怠ると、保険証が使えなくなったり、滞納処分を受ける可能性があります。
- 失業給付との関係: 失業給付を受けている期間中の健康保険についても確認しておきましょう。失業給付の金額によっては、家族の扶養に入れない場合があります。
- 75歳になったら: 75歳になると、原則としてすべての方が後期高齢者医療制度に加入します。加入手続きについては、75歳になる前に市区町村から案内があります。
定年後の健康保険は早めの確認と試算が重要!
定年退職後の健康保険には、「任意継続被保険者制度」と「国民健康保険」、そして「家族の扶養に入る」という主に3つの選択肢があります。
特に多くの人が迷う「任意継続」と「国民健康保険」は、保険料の計算方法や扶養家族の取り扱いなどが異なります。
どちらがお得かは、退職時の給与や家族構成、お住まいの地域などによって一人ひとり異なります。
後悔しない健康保険選びのためには、
- 退職前に会社の担当部署に任意継続の保険料を試算してもらう
- お住まいの市区町村の役場に国民健康保険の保険料を試算してもらう
この2つを必ず行い、ご自身の状況に合った最適な選択肢を見極めることが非常に重要です。
定年後の大切なセカンドライフを安心して送るためにも、健康保険について早めに確認し、計画的に準備を進めましょう。
この記事が、あなたの健康保険選びの一助となれば幸いです。